ご自身もマイホームとして賃貸併用住宅を建て、家族と住む沖村社長。しかし、建築までの道のりは決してスムーズではありませんでした。

家族との対話を重ねながら課題を一つひとつ解決していった点は、多くの賃貸併用住宅オーナーと同じです。その過程や実際に住んでみた感想、入居者との関わり方などを奥さまも交えて伺いました。

1. 「引っ越したくない!」奥さまは何年も建築に反対

賃貸併用住宅の建築においては、しばしば家族の反対がネックになることがあります。沖村社長も同じで、まずは奥さまが乗り気ではないところからスタートしました。その頃の奥さまの心境について、まずは伺ってみましょう。

もともとはごく一般的な一戸建てにお住まいだった沖村ファミリー。西武線沿いの閑静な住宅街に購入された建売住宅で、奥さまはとても気に入っていたそうです。

「長男が小学校に上がる前で、次男はまだ赤ちゃんだったかな。その頃に新築で購入したおうちで、公園も近くて落ち着いた雰囲気で、本当に住みやすかったんですよ。そんなに大きい家じゃないけど、リビングも日当たりがよくて」

まさに子育てをするのにぴったりな環境で、ご近所にママ友もたくさんできたそうです。子どもたちもすくすく成長し、高校生と中学生に。その間にサラリーマンだった沖村社長は独立して、今の事業を立ち上げました。賃貸併用住宅を専門に建築・賃貸管理までを担う「はたらくおうち」です。

「主人の仕事のことは、話に聞いて知ってはいました。でも、自分が賃貸併用住宅に住むという考えはまったくなくて。主人は『わが家も賃貸併用住宅に住もうよ』と言ってきたんですけど、子どもを転校させてまで引っ越す必要はあるの?という感じでしたね」

「こんなのあるよ」と何度か土地を見に行かされたけど全くその気になれなかった、と当時を振り返る奥さま。その状態が何年か続いたといいます。

「最初は大反対だったのよね」と奥さま。

2. 奥さまの心の奥にあった、
賃貸併用住宅に対する先入観

いま住んでいる家が気に入っているから引っ越したくない、息子を転校させたくないという理由で、賃貸併用住宅の建築を拒んでいた奥さま。実はもうひとつ、踏み切れない理由がありました。

「実家で以前、賃貸住宅を経営していたんです。ワンルームが4部屋の物件でした。母が大家として管理も自分でやっていたのですが、住んでる人が退去するたびに敷金がどうだの、リフォームして原状回復しなきゃいけないだのって毎回やってるのを見てると、すごく面倒そうで」

物件の規模は大きくなくても、賃貸経営を自主管理で行うには煩雑な手間がかかります。その姿を見てきて「大変そう」という印象を抱いていた奥さま。そのイメージが強く、沖村社長から賃貸併用住宅を勧められても「イイね!」とはなりませんでした。

「家賃が入ってきて住宅ローンが相殺されるっていっても、実際は出て行くお金も大きいんじゃないの?って思っていました。母の大変そうな姿から、手間の割には儲からないのでは、というイメージでしたね」

そんなことはない、とキャッシュフローを交えて、粘り強く奥さまに呼びかけ続けた沖村社長。それに対して奥様は、もし賃貸併用住宅を建てるならこれだけは絶対に譲れない、という条件を出されました。

  • 今の家より狭くならないこと
  • 日当たりがよいこと
  • 子どもが転校せずにすむこと

都内でこれらを満たすのは、なかなかの難題のようにも思えます。果たしてどんな土地が見つかったのでしょうか?

「愛着ある前の家を引っ越すまで、いろいろありました」

3. 「この土地ならば」と家族を説得。課題は息子の転校

当時お住まいのおうちよりも広く、同じくらい日当たりがいいこと、子どもが転校せずにすむエリアという条件付きで、賃貸併用住宅の建築を認めた奥さま。あとは土地探しということになりますが、どのように動かれたのか沖村社長に聞いてみましょう。

「自宅については子どもの学区内で探していましたが、なかなか難しくて。そんな中、隣の区で『これは』と思える物件に出会ったんです。閑静な住宅地でありながら、駅からほど近くて利便性も高い。わが家で買うことはかなわなくても、会社として収益が見込めそうだったので買い取りを決めました」

そこは、もともと古いアパートが建っており、入居者も数人住んでいる状態で売りに出ている物件でした。立地がいいため空室を残した状態でアパート経営をするよりも、更地にして土地活用した方が収益性は高くなります。しかし、売主さんが高齢でそこまでの労力をかけられないということで、そのまま売りに出していたのです。

「会社で買い取り、最初は入居者さんに対して賃貸管理をしていました。しかし、老朽化していることもあり、新たに入居者を募集するよりも、入居者さんには『別のお住まいを探します』とお知らせして、半年ほどかけて立ち退き交渉をしました」

立ち退き交渉が問題もなくスムーズに進むなか、今後の土地活用の選択肢のひとつとして、自宅建築という道も捨てきれなかった社長。しかし、次男の中学の学区外。「まずは見に行ってみて」と奥さまが行ったものの、「場所はいいけどね」という反応にとどまっていたそうです。

奥の建物がアパート(古家)。その後、解体へ。

4. ローンの組み方に悩むなか、子どもたちの同意が!

沖村社長が見つけた土地は子どもの学区外ではあったものの、奥さまにとっても「いいな」と思えるものでした。立ち退き交渉にかかった時間は半年ほどですが、会社としてはその後もずっと寝かせておくことはできません。

「次男が転校せずにすむように、中学卒業に合わせて引っ越しできないかと考え、妻と話し合いました。それならOKということだったので、先に賃貸併用住宅を建て、我々は住まずに賃貸部分だけを貸して、それでアパートローンを払っていこうと思ったんです」

その時点で次男は中学1年生。2年間は投資物件として稼働させて、卒業に合わせて引っ越す計画を立てたのです。しかし数年前に不動産投資関連業者の不祥事が立て続けに起きたこともあり、アパートローンの審査がとても厳しくなっていたタイミングでした。

「住宅ローンじゃないとダメと言われてしまって。住宅ローンは2本同時に借りられませんし、その家に住まなくてはいけないと決まっています。沖村家として新しく住宅ローンを組むなら、今の家を売却して引っ越す必要が出てしまったんです」

引っ越して越境通学の道を調べていたところ、なんと「引っ越してもいいよ」と次男本人から申し出が。越境ではバスと電車を乗り継いでの通学となるためかなり大変ではあるけれど、新しい家では自分の部屋が持てるというところが決め手になったようです。

「その時に住んでいた家は3LDKで、長男と次男は広めの部屋を共有していました。でも、これからそれぞれに受験生になっていくことを考えると、自分の部屋はあったほうがいいよね、と妻も納得してくれたんです」

広さや日当たりの問題も、土地が50坪ほどあるのでなんとかなりそうです。家族の同意も得て、無事に売買契約を終えることができました。

地鎮祭のようす

5. 間取りは?賃貸部分の仕様は?
決めることがたくさん!

その後、アパートの解体、地盤調査を経ての地盤改良工事と進むなか、肝心の賃貸併用住宅についても、間取りプランや仕様を決める必要がありました。新しい家にあたって希望したことをご夫婦に伺ってみましょう。

「家族それぞれに部屋があること、つまり4LDKの間取りは大前提でした。主人は帰りが夜中になることも多く、私は子ども達の支度で朝が早いので、生活リズムがかなりずれているんです。

あとは、お客様が多いので玄関は広く、子ども達の部屋はリビング経由で入れる位置にすること。洗濯物を干すバルコニーは広めにしてほしいこともお願いしました。男の子2人が部活でバスケをしているので、洗濯物がすごくたくさん出るので」

「自宅部分の内装などはほとんど妻に任せきりでしたが、屋上とサウナは譲れませんでした。屋上はお湯が出るようにして、露天風呂のように楽しめたらいいなぁ、と。

僕がこだわったのは、1LDK3部屋の賃貸部分。見えない部分では、防音用の建材を入れてお互いにプライバシーを守れるようにしました。

水まわり設備なども賃貸住宅にしてはグレードの高いものを入れています。新築で場所もいいので、都内で働くリッチシングルや共働きのカップルをターゲットに設定して」

ワンルームではなく、あえて需要の多い広めのお部屋にして、アパートには珍しいオートロック、追い焚き機能や宅配ボックスなどの設備も備えました。『家賃は少し高くても、新しくてセキュリティのしっかりした部屋に住みたい』『ワンルームはイヤ』という層を狙う戦略です。

設計士と何度も打合せを繰り返しながら、その合間に各建材・設備のショールームめぐり。迷いながらも「決めることが多くて大変だったけど、楽しかった」と家づくりを振り返るおふたりでした。

基礎工事のようす

6. 完成したのは、
ペットと住めるスタイリッシュな併用住宅

建築途中、現場にも何度か足を運んでいたという奥さま。施工中は間取りや日当たりなどに不安を抱くこともあったそうです。

「基礎だけの時は、日当たりがすごく良くて楽しみだったんです。ところが壁ができてくると、土地が奥まっているので、日陰ができてきて『暗いんじゃないの?』って思ったり……。失敗したかなって心配で仕方なくて、しょっちゅう見に行ってましたが、設計士さん曰く建築途中ではいろいろと心配が出てくるんだそうです。」

完成してみると、3階リビングは吹き抜けからの光もあって十分明るく、杞憂だったことが分かったそう。中学校2年生で転校した息子さんも学校に慣れ、1年後に高校受験を迎えたときは、自分の部屋で集中できる環境のありがたさを痛感したそうです。

入居者も決まり、賃貸住宅も本格的に稼働。ペットOKの物件としたことで、ワンちゃんと一緒に入居された方も。新築でペット可というのはかなり珍しく『家が傷むから』と抵抗感のある大家さんも多くいらっしゃいます。その辺りはどうなのでしょうか?

「ウチも猫と犬と暮らしているので、ペット可でもいいかなって。ペットがいると原状復帰もフルで行うのが前提で、入居者さんも分かっていらっしゃるので敷金返金などのトラブルも少ないんです」と沖村社長。賃貸管理部門を合わせ持つ、併用住宅専門会社としてのノウハウが活かされた選択です。防音仕様にしたことも功を奏しています。

社長がこだわった自宅屋上にはパーゴラ(格子状の屋根を持つ構造物)をつくり、ガーデンソファを置きました。子どもたちが友だちを連れてきてBBQをするなど、新居での生活をすっかり堪能しています。

奥さまも、前の家からのお友だちが遊びに来てくれて、新しい土地での寂しさはそこまでではなかったそう。「この辺りはステキなお店も多いので、遊びにくると気分が変わると喜んでくれます」とのことでした。

沖村家にとって、ペットも大切な家族です。

7. 「教育費もまだまだかかる中、
家計に余裕が出て嬉しい」

最後に、賃貸併用住宅の暮らしについて奥さまに伺いました。入居者とは、会えば挨拶を交わす間柄だそうですが「大家さんって思われているかどうかは分からないですね」とのこと。エントランスをお掃除したり、お花を植えたりしているから分かっているのかも?と思いつつ、自然な距離感がはかれているようです。

入居者との関係性については賃貸併用住宅によってケースバイケースで、大家宅だと入居者に知られたくないため、玄関の仕様などを賃貸部分と同じにするオーナー様もいらっしゃいます。社長邸も、玄関ドアや屋外灯のデザインは同じものを選びましたが、思っていたよりも入居者と鉢合わせする機会は少ないそうです。

「家計については、建つ前までは『計算ではうまくいってるけど、現実はどうかな』という感じでした。実際に住んでみると、住宅ローンに家賃収入が充てられるのは大きいですね。前の家のときは月20万円ほどをローンで払っていたので、年間支出240万円がゼロになってとても家計が助かっています。家が人に代わって働いてくれるというのは家計を預かる主婦としては本当にありがたいです。10年、20年の単位で考えるととても大きなお金になりますから。

長男も理系の大学に通っているので、卒業しても大学院に進むかもしれず、まだまだ教育資金がかかるわが家。今後、留学などもさせてあげたいから、調子にのって贅沢しないようにしています」

理想のおうちと住宅ローンから解放された生活を手に入れつつ、将来は子どもたちに資産を残せるのも嬉しい、と笑顔でお話されていました。

日当たりのよいリビングでグリーンもすくすく。念願のサウナも導入!

沖村ご夫妻、ありがとうございました!

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