投資不動産に必要な初期費用は?
老後資金の不安や副収入を目的として、「投資不動産」を検討するかたは少なくありません。
この記事をお読みのあなたも、何らかの理由から投資不動産の購入を
検討されているのではないでしょうか。
ただ投資不動産を購入するにあたり、最初に「自己資金」が必要です。
仮にローンを活用するにしても、自己資金がなくては融資は受けられないものと考えたほうが
良いでしょう。
では具体的にどのくらいの自己資金が必要になるのか。
この記事では不動産投資ビギナー向けに「初期費用」、「頭金」について解説します。
自己資金を調達する方法や少ない自己資金で不動産投資を始めるコツもご紹介しますので、
不動産投資に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
どれくらい必要?不動産の初期費用と頭金
投資不動産の購入で必要な初期費用は、「物件価格の7~10%」が目安。
ローンを利用して投資不動産を購入するなら、頭金として「物件価格の2~3割」を
用意しておくのがベストです。
【投資不動産を購入する際の初期費用と頭金】
初期費用:物件価格の7~10%
頭金:物件価格の2~3割
初期費用と頭金は同じ意味として捉えられがちですが、まったく違う費用です。
では初期費用と頭金の違い、なぜ上記の金額が必要になるか具体的に解説します。
初期費用とは?
初期費用とは、「投資不動産価格とは別に発生する費用」です。
「投資不動産を購入する手続きで必要になるお金」と考えていただければ分かりやすいでしょう。
初期費用は大きく5つに分けられます。
【初期費用の内訳】
- 不動産業者に払う仲介手数料
- ローンを借りるための手数料や保証料
- 不動産登記の費用と司法書士報酬
- 各種税金
- 各種保険料
最初に解説した「初期費用は投資不動産価格の7~10%」というのは、上記すべてを合わせた額。
ただあくまで初期費用の相場であり、購入する不動産の種類や
各種手続きの方法などにより変動します。
銀行によっては初期費用の融資を受けられる「諸費用ローン」もありますが、
毎月の返済が高くなる上、取引上の信用面を考えると初期費用くらいの資金は
用意したいところです。
頭金とは?
頭金は「不動産を購入する資金の一部として充てるお金」です。
昨今は住宅ローンをフルに活用し、頭金0円で不動産を購入できるケースも少なくありません。
ただ頭金0円ではローンの借り入れ額が大きくなり、返済時の負担が増します。
そもそも頭金をまったく用意していなければ、銀行の心象も良くありません。
また頭金の一部は、不動産の購入を決めた際に「手付金」として不動産業者に渡す必要があります。
信頼関係を構築する頭金は、スムーズな不動産取引と融資を実現する役割があるのです。
初期費用と頭金の簡易シミュレーション
では5,000万円の投資物件を購入すると仮定して、諸費用が一体どのくらいの金額になるか
計算してみましょう。
【初期費用】
物件購入にあたって必要になる事務的な費用や税金など。「物件価格の7~8%」が目安。
計算式:物件価格×7~8%
<計算例>
物件価格:5,000万円
計算式:5,000万円 × 7~10%
初期費用:350~500万円
【頭金】
物件購入に充てるためのお金であり、「物件価格の2~3割」が目安。
計算式:物件価格×20~30%
<計算例>
物件価格:5,000万円
計算式:5,000万円 × 20~30%
頭金:1,000~1,500万円
前述のとおり、初期費用や頭金は取引をスムーズにし、不動産業者や銀行から信用を得るための
大事な自己資金です。
ただ上記の初期費用と頭金を合計すると1,350~2,000万円。
あなたは、「こんなに多額の自己資金が必要では、不動産投資はできない……」なんて思われたのではないでしょうか。
そこで投資不動産の諸費用が用意できない場合、どう対応すべきか解説します。
不動産投資の初期費用と頭金を用意できないときの対策
金融機関は融資実行にあたり、「資産状況」、「年収」、「勤務先」、「購入する不動産の家賃収入」などを審査します。
なかでも、自己資金の有無は重要な審査項目。
投資不動産において「融資を受けられるかどうか」は非常に大事な問題です。
金融広報中央委員会「知るぽると」で公表されているデータによると、日本国民の平均的な預貯金額は「657万円」。
年代別にすると以下のとおりです。
【年代別の預貯金額】
20歳代:106万円
30歳代:322万円
40歳代:372万円
50歳代:586万円
60歳代:946万円
70歳以上:892万円
出典:金融広報中央委員会「知るぽると」 家計の金融行動に関する世論調査
日本人の預貯金額平均を見る限り、自己資金だけで不動産投資の初期費用や頭金をまかなうのは
簡単ではないのが分かります。
自己資金が少なければ、よほど安定した利益を生む不動産を見つけない限り、
銀行から融資を受けるのは難しいでしょう。
そこで、自己資金以外で初期費用や頭金を用意する手段をいくつかご紹介します。
家族や親せきに援助してもらう
自己資金を用意するのにもっとも低リスクなのが「家族や親戚の援助」。
援助と言っても口約束で110万円以上の受け渡しがあると贈与税の対象になる上、
信用問題にも関わります。
そのため家族や親戚の援助を受けるなら、「借りる」という形にする必要があります。
ただし、以下のポイントは必ず押さえておきましょう。
- 金銭消費貸借契約書を作成して借りた証拠を残す
- 利息を含めた金額を定期的に返して貸主を安心させる
- 返済した証拠として通帳記入などの書類を残す
上記のポイントを押さえれば贈与ではないため税金はかかりません。
ただ、家族や親戚に協力を依頼するにしても理解を得られなければ援助は受けられないでしょう。
毎月の収支シミュレーションを用意したり、公正証書を作成したりして
安心してもらう工夫が必要です。
ノンバンクから融資を受ける
「ノンバンク」とは銀行以外の金融機関を指し、クレジットカード会社や消費者金融が
一般的によく知られています。
ノンバンクで不動産投資の資金を調達すると言っても消費者金融などではなく、
投資不動産専門の「アパートローン」や「不動産担保ローン」です。
ただしノンバンクは審査のハードルが低いメリットがある反面、
銀行などから借りるより金利が高くなります。
ノンバンクから資金調達を考えるなら、利回りや返済額、空室リスクを
しっかり加味しなければいけません。
投資対象を「賃貸併用住宅」にする
さて「親族にお金を借りるのも金利の高いノンバンクも極力避けたい」と思ったなら、
「賃貸併用住宅に投資する」のも一つの方法です。
賃貸併用住宅なら不動産投資ローンではなく住宅ローンを活用できるため、
以下のような多くのメリットが生まれます。
- ノンバンクは3~7%の金利であるのに対し、住宅ローンは金利1%未満がほとんど
- 借入期間は最長35年になるため、毎月の返済額を抑えられる(44歳までは35年、45歳以降から借入期間が1年ずつ短くなります)
- 不動産投資ローンに比べて、自己資金が少なくても審査に影響しづらい
- 住宅ローン控除による節税効果もある
賃貸併用住宅は「自分の住む家」という前提であるため、極めて低金利の住宅ローンを利用できます。
一時は不動産投資がブームになり、どの銀行も不動産投資ローンやアパートローンに積極的でした。
ただブームが去った現在、銀行は不動産投資向けのローンにかなり慎重な姿勢です。
十分な自己資金や不動産に高い資産価値がなければなかなか融資を受けられません。
そこで賃貸併用住宅がおすすめです。
面積の50%以上を自己居住用とすれば賃貸併用住宅として住宅ローンを活用でき、
得られる家賃収入をそのままローン返済に充てられます。
自宅と家賃収入の両方を得られる上に金融機関から融資を受けやすいメリットから、
不動産投資が初めての人からも人気を集めています。
不動産投資を始める際の注意点
不動産の購入に関する初期費用や頭金について解説しましたが、最終的に投資不動産で大事なのは
「コストの管理」「ローンの活用」「取引上の信用」です。
これら3つがあるからこそ、不動産投資が成功すると言っても過言ではありません。
では、どう行動すれば上記3つの要素を満たせるか具体的に解説します。
収支シミュレーションは必ず行う
不動産投資を始める前に、必ず行っていただきたいのが「収支シミュレーション」。
収支シミュレーションと言っても難しく考える必要はなく、「家賃収入-費用=利益」を
常に意識すれば問題ありません。
不動産投資の主な利益は家賃であり、ほかは全て費用です。よって
「費用とローンの支払いを終えて残る利益」をしっかりシミュレーションする癖を付けましょう。
【不動産投資の利益】
- 家賃
- 礼金
- 更新料(管理会社と折半の場合が多い)
【不動産投資の費用】
- ローン返済
- 管理委託費
- ハウスクリーニング費
- 修繕費
- 固定資産税
- 賃貸募集時の広告料
- 共有部の光熱費
- その他雑費
今どき礼金を設定している物件では入居者が付きませんし、
敷金は利益ではなく修繕などの費用に充てるための預かり金です。
つまり毎月の家賃と2年に1回の更新料から、すべての費用を支払う必要があるのです。
費用やローンを支払った上でどのくらいの利益が残るか。
不動産投資を始める前には必ずシミュレーションするようにしましょう。
ローンを活用して不動産投資するなら早めが吉
不動産投資を始めるなら、なるべく早い時期が良いでしょう。
特にローンを活用した投資不動産の場合、早い段階で始めると多くのメリットがあります。
- 借入期間を長くできるため、毎月の返済額を抑えて利益を出しやすい
- 早めにローンを完済できれば、家賃収入が老後のゆとり資金になる
- ローンの借り入れで必要な団体信用生命保険に加入しやすい
- 早期に実績を残せるため、2棟目の投資で融資を受けやすい
住宅ローンのほとんどが完済年齢を「80歳未満」と定めていますが、
不動産投資も例外ではありません。
金融機関によるものの、完済年齢を80歳未満と定める不動産投資ローンも多いのです。
仮に借入期間35年で不動産投資ローンの利用を検討するなら、
借入可能な年齢は44歳がボーダーライン。
早いうちから不動産投資の勉強を重ね、少なくとも44歳になる前に
不動産投資に挑戦すると良いでしょう。
仲介手数料はケチらない
初期費用のなかでも高額である「仲介手数料」。
仲介手数料は宅地建物取引業法で上限を決められていますが、実は下限がありません。
仲介手数料は、宅地建物取引業法にて以下のように上限が決められています。
仲介手数料は消費税まで計算すると複雑になるため、400万円を超える一般的な不動産取引では
「物件価格×3%+6万円+消費税」という速算式が使用されます。
前記でシミュレーションした5,000万円の物件では、
仲介手数料がいくらかかるのか計算してみましょう。
【物件価格5,000万円の仲介手数料(速算式)】
(5,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税10% = 171.6万円
仲介手数料は、値切ろうと思えば値切れます。
ただし仲介手数料の値引き交渉は、よほどの理由がない限りNGと考えたほうが良いでしょう。
仲介手数料は意外と高いため可能なら値引きしたくなる気持ちは分かりますし、
実際に「仲介手数料半額」や「仲介手数料ゼロ」を謳う不動産会社もあります。
ただ仲介手数料を半額やゼロにできるのは、あくまで売り主から
仲介手数料を余分にもらっている場合のみ。
不動産会社は取引完了後のアフターフォローも行ってくれる上、
半永久的に重要事項説明における責任も追います。
契約後のフォローや今後の付き合いを考えると、仲介手数料をケチったり
傲慢な態度で無理やり値引きさせたりする行為はやめたほうが良いでしょう。
また仲介手数料が発生するのは、中古住宅などの建物まで仲介してもらう場合です。
その点において新築で建物を建てる賃貸併用住宅などは、土地代にしか
仲介手数料はかからないぶんお得と言えます。
自己資金の役割と不動産投資のコツ
今回、不動産投資にあたっての自己資金について解説させていただきました。
ここまでの内容をまとめておきましょう。
- 不動産購入の自己資金は、「初期費用7~10%」「頭金2~3割」が必要
- 自己資金は不動産取引をスムーズにして、銀行からの信用を得る役割である
- 自己資金が少なくローンに頼るなら「賃貸併用住宅」で住宅ローンを活用
- ローンを活用した不動産投資を始めるなら早めが良い
不動産投資を成功させるには、「所有する不動産を徐々に増やす」のがコツです。
所有する不動産を増やすにあたり、自己資金について
2つのポイントを意識しておくと良いでしょう。
- 自己資金に余裕があったとしても全額を不動産投資に回さない
- 家賃収入の何割かは2棟目以降の自己資金として貯めておく
世の中には自己資金ゼロで不動産投資を始めた人もいますし、
家賃収入の使途を特に決めていない人もいます。
ただそれはリスクマネジメントに長けており、銀行や不動産会社との折衝が
よほど上手いなどの特別なケースです。
やはり一定の自己資金を用意し、信用を構築しながら不動産投資を始めるのが
成功への近道と言えます。
不動産投資を始めたら家賃収入から再投資用の資金を貯めておき、
2棟目以降の不動産投資で活用する。
不動産投資における自己資金は、将来の再投資と取引上の信用を得るための
大事な役割があるということを認識しておきましょう。