賃貸併用住宅の確定申告!「青色」と「白色」の違いと大事な節税方法

賃貸併用住宅を手に入れたら、毎年行わなければいけないのが「確定申告」。

それまで会社員として給与のみの収入を得ていたかたからすれば、

確定申告は複雑で難しいイメージがあるのではないでしょうか。

ただ確定申告を始めてしまえば意外と簡単だと感じるはずですし、

そう難しく捉える必要はありません。

何よりも不動産経営で必要な税知識が身に付くため、確定申告は

賃貸併用住宅をより合理的に考えられるようになるでしょう。

この記事では、「確定申告の基本」や「青色申告と白色申告の違い」を解説します。

賃貸併用住宅における節税方法もしっかりご説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

賃貸併用住宅の必須知識!「不動産所得」と「確定申告の必要な人」とは?

はじめに覚えていただきたいのが、「所得」とは何かという点。

得られたお金のうち税金や経費を引く前の金額を「収入」と呼び、

逆に税金や必要経費を引いて残った金額が「所得」です。

なお日本の税法上、所得は10種類に分けられています。

 

【所得の種類】

あなたの主な収入が会社員として受け取る給料だけであれば、税法上は「給与所得」のみに該当し、

賃貸併用住宅から家賃収入を得ていれば「不動産所得」も加わります。

では今回のテーマである「確定申告」は、どのようなときに必要になるのでしょうか。

あなたの収入が、会社員の給与所得のみであれば確定申告は不要です。しかし、

あなたが会社員の給与と賃貸併用住宅の家賃収入を得るとしたら、確定申告が必要になります。

引用:国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

 

給与所得以外の20万円という所得ですが、これは必要経費を差し引いた額が

20万円を超えた場合を指します。

つまり「家賃収入 - 必要経費」という計算で20万円以上であれば、確定申告が必要になるのです。

 

確定申告の種類と申告方法

賃貸併用住宅を持っていれば、ほとんどの人が必要になる確定申告。

何かと難しそうなイメージですが、まずは前提となる大事なポイントだけ押さえておきましょう。

 

  • 確定申告をする期間は、毎年2月16日~3月15日(土日祝などの曜日により前後する)
  • 家賃収入や必要経費などは必ず帳簿に記載し、証拠となる領収書や通帳などは絶対に無くさない
  • 帳簿や領収書等の書類は7年間の保管義務がある

 

確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、一般的には

「青色申告は複雑な確定申告、白色申告は簡単な確定申告」と認識されています。

しかし実際のところ、賃貸併用住宅の確定申告において青色申告と白色申告の

難易度には大きな違いはないと考えていただいても良いでしょう。

では具体的に青色申告と白色申告がどう違うのか、メリットデメリットや

必要書類と併せて見てみましょう。

青色申告

青色申告による確定申告ができるな人は限られており、誰でも可能なわけではありません。

税法上では、青色申告で確定申告できる所得は3つと決められています。

 

【確定申告が可能な所得】

  1. 不動産所得
  2. 事業所得
  3. 山林所得

 

つまり会社員の給与所得以外に在宅ワークなどで収入を得ている場合は白色申告になりますが、

在宅ワークではなく賃貸併用住宅から家賃収入を得ている場合は青色申告が可能です。

さらに青色申告による確定申告の場合、事前に申請書類を提出する必要があります。

 

【青色申告を行うにあたり事前に提出すべき書類】

なお青色申告は、所得金額から一定額を控除して良いとする「青色申告特別控除」の制度を適用できるのがメリット。

そのため節税を重視されるかたの多くは、必ず青色申告を選びます。

青色申告特別控除は「65万円控除」、「55万円控除」、「10万円控除」の3種類。

どれを適用できるかは、以下の条件を満たしているかどうかで決まります。

 

①の「事業的規模の不動産所得」とは、「5棟10室以上」の不動産経営を行っているケース。

よって比較的に小規模の不動産経営となる賃貸併用住宅は、自動的に10万円控除が適用となります。

つまり事業的規模にあたらない賃貸併用住宅は、控除額が少なくなるのと同時に

準備すべき書類も少なくなるのです。

青色申告の必要書類

まず青色申告で一般的に必要となる書類を見てみましょう。

 

【青色申告で必要になる書類】

65万円控除や55万円控除の恩恵を受けられる青色申告であれば、必ず「複式簿記」により

損益計算書や貸借対照表を作成しなければいけません。

しかし10万円控除の場合は「簡易簿記」と呼ばれる簡単な帳簿を用意すれば足り、

併せて貸借対照表も必要ありません。

先述にて「賃貸併用住宅の確定申告において青色申告と白色申告の難易度には大きな違いはない」と

お伝えしましたが、理由は控除額の違いと用意すべき帳簿の違いによるものなのです。

とはいえ、賃貸経営を成功させる基本は「節税」と言っても過言ではありません。

利益を少しでも手元に残すのであれば、やはり青色申告による確定申告がベストと言えるでしょう。

白色申告

白色申告は、開業届や青色申告承認申請書を出さずに賃貸経営を

行っている場合の確定申告の方法です。

白色申告は準備すべき書類が少なく、確定申告書類への記載も簡単なのがメリット。

しかし青色申告で適用できた10万円の特別控除がないため、

節税効果が薄れるのがデメリットになります。

白色申告の必要書類

では白色申告で必要な書類を見てみましょう。

 

【白色申告で必要になる書類】

青色申告で必要になった所得税青色申告決算書では、3つの書類が1セットでした。

しかし白色申告では収支内訳書のみが必要であり、簡易簿記による帳簿があれば問題ありません。

簡易的な簿記と貸借対照表が不要という点で同じであるため、

白色申告と10万円控除を受けられる青色申告の難易度はほぼ同じです。

やはり少しでも節税するためには、白色申告ではなく青色申告がお得と言えるでしょう。

 

不動産経営における「経費」の重要性

さて、確定申告は納税だけが目的ではありません。

青色申告の解説でもお伝えしたとおり、確定申告には節税を目的とする側面もあります。

特に不動産経営において大事になるのが、「経費」です。

確定申告においては「収入 - 必要経費」という計算で所得額を出し、

算出された所得額に対して課税されます。

そのため、いかに経費を計上できるかが節税のポイントと言っても過言ではないでしょう。

では不動産経営において、どのような費用が経費となるか一覧でご紹介します。

 

【不動産経営における経費の一覧】

  • 共用部の光熱費
  • 賃貸部分の修繕や清掃費
  • 植栽の剪定費
  • 管理会社の管理手数料
  • 火災保険料
  • 入居者募集費用
  • 減価償却費
  • 租税(固定資産税、都市計画税、印紙税、不動産取得税など)
  • 住宅ローンの利息部分
  • 通信費(賃貸経営で必要になったインターネット料金など)

 

賃貸併用住宅の確定申告で経費にできるのは、あくまで「賃貸経営に関わる費用」です。

たとえば自宅で使用した光熱費は経費にできませんし、プライベートで

使用したインターネット料金も経費にはできません。

しかし賃貸併用住宅は自宅と賃貸のスペースが一体となっているため、

はっきりと区別できない費用が発生するのも事実。

よって分けづらい経費については、一般的に「自宅と賃貸スペースの面積比で按分する」 という方法がとられます。

建物面積160㎡で「自宅6:賃貸部分4」という比率の賃貸併用住宅を例にして、

光熱費が20,000円だった場合の試算をしてみましょう。

 

【自宅と賃貸部分で光熱費を按分する例】

建物面積160㎡ = 自宅6:賃貸部分4 = 自宅96㎡:賃貸部分64㎡

光熱費20,000円 = 自宅6:賃貸部分4 = 自宅12,000円:賃貸部分8,000円

 

もちろん、自宅と賃貸部分で請求書や領収書が分けられているのがベスト。

いずれにしても計上できる経費は漏れなく計上し、

少しでも所得額を抑えるのが節税への近道となります。

 

賃貸併用住宅なら「住宅ローン控除」も適用できる!

賃貸併用住宅における節税と言えば、忘れてはならないのが「住宅ローン控除」です。

住宅ローン控除とは、住宅ローン残高の一部を所得税から控除できる制度。

毎年末に残っている住宅ローン残高の1%(最大40万円)を所得税から差し引くことができ、

控除できる期間は10年間(令和2年12月までの入居なら3年の延長)です。

賃貸併用住宅の確定申告では確定申告書Bに加えて、以下の書類を提出する必要があります。

 

【住宅ローン控除に必要な書類】

  • 源泉徴収票
  • 確定申告書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの年末残高証明書
  • 住民票
  • 土地・建物の登記事項証明書
  • 土地・建物の売買契約書または工事請負契約書(コピー)

 

普通の賃貸経営は住宅ローンではなくアパートローンを利用するため、

住宅ローン控除を利用できません。

つまり会社員としての給与所得を得ながら家賃収入も得られる賃貸併用住宅は、

賃貸経営のなかでも唯一、住宅ローン控除を利用できる大きなメリットがあるのです。

なお、青色申告と白色申告のどちらでも住宅ローン控除は利用できます。

確定申告の際は、忘れずに住宅ローン控除を活用しましょう。

 

やり始めれば意外と簡単な確定申告

では最後に、今回解説した内容を簡単にまとめておきましょう。

 

  • 給与所得以外に家賃収入を得られる賃貸併用住宅は、確定申告による納税義務がある
  • 確定申告は「青色申告」と「白色申告」の2種類
  • 青色申告と白色申告の難易度に大きな差はないため、節税が可能な青色申告がおすすめ
  • 経費を漏れなく計上すれば節税効果を見込める
  • 賃貸併用住宅なら住宅ローン控除によりさらなる節税が可能

 

何かと難しいイメージのある確定申告ですが、解説したとおり

賃貸併用住宅における確定申告はさほど難しくありません。

少し前までは書類の記載と準備で慌ただしいイメージでしたが、

IT化が進んだ現在は優れた会計ソフトも多く、

インターネットや郵送による書類提出から納税まで可能になっています。

とはいえ、普段は触れる機会の少ない税知識が必要になるのは事実。

そのため少し早めに準備を始めるのが確定申告のコツです。

確定申告の時期が近づいてから慌てないよう、日頃から書類の保管や記帳などを

マメに行っておいたほうが良いでしょう。